今回の展示は私にとっても特別なものになったので、ゆっくり書ける日を待っておりました。
この日はアーティストの友人とそのお友達のカメラマンさん、デザイン事務所所属の女性、計5名で木原千裕展「Wonderful Circuit」へ。
前回はふげん社よりリリースされた「いくつかある 光の」写真集の展示にお邪魔しました。
今回。これまで観てきた木原氏の写真展の中で最も好きな写真展でした。
恋人であった僧侶を被写体とした作品や、寺の法要風景、仏教を含む多数の宗教で聖地とされるカイラス山の巡礼路で撮影した写真、地元福岡を撮した作品などを展示します。寺に拒絶された葛藤から信仰による救いとは何か、人間の尊厳とは何かを考え、巡礼の旅を通して、また写真と向き合うことで自身を発見していきました。
展示を見る流れ(方向)もまた「巡礼」に。
手元にパンフレットがあるんですけど、質感も色合いも手触りも、写真と木原氏の思いを全力で表現している感じです。
展示は一枚一枚へ詰まったものが計り知れなくて。それぞれの思いを感じながら、時間軸の歪んた世界へと引き込まれます。
カイラス山の巡礼路は想像を絶する世界。私だったらひとりでここに行き切るだろうか?
ここへと旅立つ理由を持った木原氏は、そこへ招かれたのだなと思います。
展示に寄せて少し先を歩いていたあの女性が熱心に祈りを捧げている。仏教徒だったのか、と今このとき理解した。吹雪の中、標高5000mに達しようとするこの場所で両手と額を何度も地面にこすりつけている。欧米から来ているのであろうこの女性とは初日の宿で同室となった。私に英語力がないことがわかるや否や、彼女は口元をチャックするジェスチャーをし、私の言葉を遮った。驚き、それが何を意味するか理解したあとにはじわりと心を刺していた。旅の間中彼女を遠ざけたのはこの出来事があったからだ。しかし今、目の前に現れた篤い信仰心に、肯定への希求とこれまでの過去の出来事が脳裏に激しく流れ出していた。木原千裕
引用: http://rcc.recruit.co.jp/gg/exhibition/23ph-kihara-chihiro/23ph-kihara-chihiro.html
木原氏の文章及び「日記」的なものは人気があるんですけど、その時の情景がリアルかつ素直でひねくれてて。とても愛すべき文章であります。
パンフレットの最後のページに掲載されているのが上のリンクです。
写真に知っている場所の写真が挿入されていて、見るともう帰りたくて泣きたくなるほど笑(実際泣いてます)
カイラス山の巡礼について調べながら写真(パンフレット)を何度も見返しています。
巡礼路をともにするヤク。
それぞれの信仰を持ち祈る人々…
どれだけの思いがここに彷徨っていたのだろう…と強烈なパンチを真正面から食らう。
他にも京都のお寺の写真やニカさん、僧侶の女性だったり、現在の木原千裕を形成している一部分がどっぷり表現されていました。
もう一度、見たいです。作品の展示でここまで強く思ったのははじめてです。
特別な時間を、ありがとう。
現場でしか聞けないあんな話やこんな話もめちゃくちゃ刺激的で壮絶でした。「縁起」について、あれから考えています。
木原氏、次回は福岡にて展示をします。
2022年7月26日(火)~8月7日(日)開催という事です!
展示作品はタイトルの通り、今年の2月〜3月にふげん社で展示された「いくつかある 光の」です。
夏の福岡で木原千裕。ものすごい組み合わせだと思うので笑、お見逃しなく。